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勤怠データ分析で離職予兆を捉える:人事担当者が実践すべき具体的なステップと対策

Tags: 勤怠データ, 離職率, データ分析, 人事戦略, 早期離職

人事担当者の皆様にとって、離職率の低下は常に重要な経営課題の一つではないでしょうか。特に、従業員の「異変」を早期に察知し、具体的な対策を講じることができれば、離職を防ぎ、組織の安定に大きく貢献できます。そのための強力なツールとなるのが、日々の業務で蓄積される勤怠データです。

多くの企業では、従業員の労働時間、残業時間、有給取得状況、欠勤日数といった勤怠データを日々記録しています。これらのデータは単なる労務管理の記録としてだけでなく、従業員の心身の状態やエンゲージメントの変化、ひいては離職の兆候を示す重要な手がかりとなることがあります。

本記事では、データ分析の専門知識がなくても、人事担当者が勤怠データを活用して離職予兆を捉え、具体的な対策につなげるための実践的なステップと方法について解説します。

勤怠データが離職予兆を示す理由

従業員の労働に関する行動は、その心理状態や業務負荷を反映することが多く、これが勤怠データに表れることがあります。例えば、以下のような変化は、従業員が何らかの課題を抱えている可能性を示唆します。

これらの勤怠データの変化は、従業員が抱えるストレスや不満が顕在化したものであり、離職につながる前の「サイン」として捉えることが可能です。

離職予兆を捉えるための勤怠データ分析の基本ステップ

勤怠データを離職予兆の把握に活用するためには、以下のステップで分析を進めることが推奨されます。

ステップ1:必要な勤怠データの収集と整備

まず、分析に必要な勤怠データを勤怠管理システムや人事システムから抽出します。最低限、以下のデータ項目を収集することをお勧めします。

これらのデータは、正確性と網羅性が重要です。データが不足していたり、誤りが含まれていたりすると、分析結果の信頼性が損なわれるため、必要に応じてデータのクレンジング(データの整理・修正)を行う必要があります。

ステップ2:異常値・変化のトレンドを特定する

収集した勤怠データから、個々の従業員や部署における異常値や傾向の変化を特定します。

これらの分析には、Excelのピボットテーブル機能や、BIツール(Business Intelligenceツール)を活用すると効率的に進めることができます。

ステップ3:他の人事データとの紐付けによる相関分析

勤怠データ単体での分析も有効ですが、さらに精度の高い離職予兆を捉えるためには、他の人事データと組み合わせて分析することをお勧めします。これは「相関分析」の一種であり、異なるデータ項目間で関連性があるかを探る手法です。

例えば、以下のようなデータの組み合わせが考えられます。

これらの組み合わせにより、「なぜその勤怠データの変化が起きているのか」という仮説を立てやすくなり、より本質的な原因究明につながります。

ステップ4:具体的な離職予兆の特定とアラート設定

分析を通じて、どのような勤怠データの変化を「離職予兆」と見なすか、具体的な閾値(しきい値)を設定します。

これらの閾値は、企業の文化や業界、職種によって調整が必要です。 一部の勤怠管理システムや人事システムには、特定の条件を満たした場合に自動でアラートを発する機能が備わっているものもあります。これを活用することで、人事担当者は膨大なデータの中から、優先的に状況を確認すべき従業員を効率的に特定することが可能になります。

分析結果から導く具体的な離職防止策

勤怠データ分析によって離職予兆が特定された場合、単にデータを把握するだけでなく、具体的な行動につなげることが重要です。

個別対応の強化

離職予兆が見られる従業員に対しては、きめ細やかな個別対応を検討します。

組織全体の改善施策

特定の部署や組織全体で異常な勤怠データの傾向が見られる場合は、より広範な施策が必要です。

効果測定とPDCAサイクル

施策を実施したらそれで終わりではありません。施策が離職率低下にどの程度貢献したか、勤怠データにどのような変化が見られたかを継続的にモニタリングすることが重要です。この「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Act)」のPDCAサイクルを回すことで、より効果的な離職防止戦略を構築できます。

勤怠データ活用の注意点と倫理的配慮

勤怠データを離職予兆の把握に活用する際には、いくつかの重要な注意点があります。

まとめ

勤怠データは、日々の労務管理だけでなく、従業員の離職予兆を早期に捉え、具体的な対策を講じるための強力なツールとなり得ます。データ分析の専門知識がない人事担当者の方でも、本記事でご紹介したステップを踏むことで、従業員の「異変」を客観的に把握し、先手を打った離職防止策を実行することが可能です。

勤怠データを単なる記録としてではなく、従業員のエンゲージメントを高め、組織を活性化するための戦略的な情報源として活用することで、データに基づいた離職率低下戦略を実現し、持続可能な組織づくりに貢献していきましょう。